我々の業界、その昔は多くの理美容室では数字が伏せられていた。
ほとんどのスタッフは店の売り上げどころか自分の売り上げすら理解していなかった。
80年の頃からチェーン店が現れ数字の明確化が始まった。
計数管理による経営分析の始まりである。
数字に弱い経営者のサロンは淘汰された。
それらは『仕事はみて覚えろ!』で教育にも理論は存在しなかった。
何せマニュアルが無いのだから。
業界にマニュアルが整備されたのは80年代以降である。
悪しき徒弟制度は終焉を迎えた。
その頃はカリスマではなく、巨匠という存在であった。
石渡潔さん、萩原宗さん、井上陽平さん。
石渡潔さんは撮影やショーを演出し、感性の見せ方は際立っていた。
萩原宗さんは美容室経営だけではなく、カットスクールを全国展開し富と名声を築いた。
井上陽平さんは美容室のチェーン展開だけではなくヘアースタイリスト協会を設立し、後輩育成においては石渡氏萩原氏をしのいだ。
後のカリスマ美容師を多く輩出した嶋ヨシノリさんや、日本人で最初にニューヨークで大成功を収めた須賀勇介さんも井上陽平美容室出身である。
大衆が美容業界に注目し始めた。
ヘアーメークのデザインをここぞとばかりにアピールし、脚光を集めたカリスマ美容師の出現は90年代である。
AQUA、IMAI、MINX、PHASE、柿本アームズを中心とする表参道のトップスタイリスト達が盛んに業界紙『しんびよう』にクローズアップされていた。
またそれまではメーキャップはメーキャップアーティストに任せられていたが、メーキャップを自分で行う美容師が現れトータルデザインするようになり美容師の質が大幅にアップグレードした。
カリスマブームの布石は80年代半ばからです。
雑誌の新刊ブームとゲーム機の普及で老舗雑誌の販売部数に陰りが見え始めた。
そんな中『anan』『non-no』がSEXと美容室を特集すると飛躍的に販売部数が伸びた。
そこにTVプロデューサーが目をつけた。
青山、表参道の美容室が雑誌どころかTVに取り上げられ、カリスマ美容師が一般人からも注目を集めた。
カラーブームが到来し、業界はバブル崩壊を見事に克服した。
サスーンカットが広がった60年代に次いで、カットの技術革新が飛躍的に進化したのも間違いなく90年代。
同時にパーマ剤やトリートメント剤も画期的な新素材が現れ、ZACCの高橋和義さんをはじめとする一部の美容師はケミカルにも注目し始めた。
ミレニアムをはさみ、美容学校が乱立し業界にこぞって人が流れ込んだ。
そして表参道界隈には美容室が溢れた。
2000年代、原宿のホームから竹下通りを望むとテナントは軒並み美容室が占めていた。
今は殆ど無い。
美容業界はバブルの様相を呈し、青山や表参道には日本全国から美容師の卵が集まった。
ところが人が集まるのをいいことに多くの経営者は待遇を無視し、最低賃金法を大きく下回る低賃金でスタッフをまさにこき使った。
当然質の低下を招いた。
90年の初頭、接点が有ったニューヨークドライカットの山根英治さん、Off Hairの古里オサムさん、IMAIの有村雅弘さん、MINXの高橋マサトモさん、AQUAの綾小路竹千代さん、ZACCの高橋和義さん、PHASEの横手康弘さん、そしてRitzの金井豊さん達は、今の美容師とは比べ物にならない哲学を語っていました。
七里ガ浜でよく一緒になったキムタク担当のBEAUTRIUMの川畑タケルさんもああ見えてかなりの哲学の持ち主です。
更に90年代からは鋏を持たない大手チェーン理美容室経営者が急増した。
鋏を持たざる経営者は宣伝広報を駆使し、サロンブランドをアピールしそれまでのマンパワー経営からサロンパワー経営に変えた。
それはかなりシビアな数字管理経営になり、攻めの積極的集客経営が始まった。
1983年に鋏を置いた田谷哲也さん率いる『TAYA』が東証二部〜一部上場を果たしたのは2000年を挟んでである。
しかしながらブームが去った2010年頃になると業界は完全なオーバーストアー状態に陥り、QBを筆頭にカット専門店の乱立もあり完全な値引き競争に陥ってしまった。
特に鋏を持たざる大手チェーン経営者は ドライスティックに値引きで攻め立てた。
現場の大変さが理解できなかったから。
美容師たちは悲鳴を上げていたが経営者は危機感が薄かった。
当時セミナーに集まった美容師達が至る所でカット料金のディスカウントの愚痴を溢し合っていた。
スタッフの離脱に繋がった。
原宿界隈からも美容室が消え始めた。
私は以前から美容師の初任給20万円で社会保険を完備しないと社会から見放される!
そのためにはカット料金を上げていかないと!と訴えていたが、組合理事達はスパなどのトッピングメニューで客単価を上げれば良い!というスタンスで、真剣に対策を取らなかった。
スパなどのトッピングメニューはたかが知れている。95%以上がカットのお客様である。
つまりカットの時間生産性金額を上げない限り問題は解決しないにも関わらずカット料金から目をそらした。
結果、美容師の給与は上がらず社会保険もほとんどが未加入の現状。
社会保険を逃れる為に法人を解散するという愚かな行動に出る経営者まで現れた。
美容業界が迷走しているうちにカット専門店や業務委託や面貸しに人の移動が始まった。
それがチェーン店の閉店ラッシュを招いています。
鋏を持つ経営者がこの業界の黎明期を支え、持たない経営者 がイノベーションを起こしが両者とも時代を見誤ったのであろう。
長らく低迷を続けて来た理容業界だが一部に活況を呈している様です。
私の周りにも「もう美容室は脅威にならん!」と豪語する理容経営者が多くいます。
90年以降頃、理容師志望者が減り続けた結果、店舗数も減り相対的に30代40代の熟練理容師の比率が高まった。
美容師のチープな技術とミーハーな雰囲気に見切りをつけた大人のメンズのニーズをつかんだ。
そしてラグビーワールドカップでフェードスタイルがブレイクした。
良くも悪しくもオーナー経営者で多くが鋏を持ち続け、サロンを大型化しなかったのが技術の低下を招かなかったのでしょう。
今後の美容業界のヒントになるのではないでしょうか?
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